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「血を吸う粘土~派生」感想

 映画「血を吸う粘土~派生」について、あまりにも中身のないツイートで盛り上がってばかりいたので、今一度書きまとめておくことにしました。

 前作「血を吸う粘土」の感想文はこちら

 

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ネタバレを除いたはなし

 呪いの粘土・カカメが舞台を変えて大暴れ。内容は前作の後日譚となっており、流れを踏んで視聴することで見所が分かりやすくなります。前作譲りの”特殊メイクによるグロテスクで冒涜的な粘土表現”と”芸術を志す人間の狂気”がたっぷりと練り込まれており、恐怖の粘土による物語を異なる切り口で楽しめるようになっています。

 特に”芸術家の狂気”は前作でもキモとなっていましたが、派生においてはさらにクローズアップされる要素になっており、作品全体を通じてドラマ性が強化されています。これは派生の舞台設定が大きく関わっているように思われます。

 前作の舞台は美術予備校でしたが、「派生」の舞台は新進気鋭のアーティストの雛たちの合宿。閉鎖的で鬱屈とした、まだ殻を破る前の田舎の受験生たちとは一線を画し、それぞれが自分の名前をもって活動中であり、自らの個性や強みに対して自覚的で挑戦的なメンバーということで、各々のアピールポイントが豊富です。死ぬまでたっぷり楽しめます。

 登場人物それぞれの製作スタイルが垣間見えるのもポイントで、アート方面の表現を楽しみたい人には一層たまらない作品になっています。加えて、アーティストの尖り感はサウンドや画面演出にも波及しており、平面表現ならではの映像の切り取り方も魅力の一つです。

 カカメの変幻自在のパワフルさももちろん健在。前作で猛威を振るった粘土ホラーが大好きな人間は、よろこんで”おかわり”をほおばることが出来ます。粘土に飲み込まれていく一人目の犠牲者の芸術性はもちろんのこと、人形態もまたその気の抜けた顔や知能の足りなさ故かちょっと可愛らしく、それでいて存分に恐ろしく人々を蹂躙してくれます。

 

 さて、正直に言いましょう。

 この破滅的なB級ホラーになぜ「派生」なぞがあるのか。それも、あの土臭く閉塞的で鬱屈とした怨念が魅力だった前作に対して、こちらはスラっとしたヘキサゴン主体のメインビジュアル。それでは良さが潰えるのではないか。あの物語の終わりにとって続きなど蛇足、平面的なビジュアル通りにペラッペラじゃないのか。

 ……そう思っていた時期が私にもありました。が、その考えは紛うことなき誤りです。何層にも重なったアーティストたちの心意気を、彼らの思いとそれが途絶える瞬間を、再び繰り返されるカカメの恐怖を、その目に焼き付けてほしい! 特に前作を見たやつ! 見てくれ! 前作を見てないやつは両方見てくれ!

 これが今の私の思いです。「血を吸う粘土~派生」を…見ろ!

 

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ネタバレを含むはなし

 粘土自体が性癖直撃ムービーだったことは前回の感想文で述べたのですが、派生も派生で別方向からぶっ刺してくるムービーでしたね。

 で、先述の通り、派生はキャラがバリバリ立っている。オタク好みなのは派生の方じゃないかなあ~と思うし、実際に作品語りもキャラ語りに終始してしまいます。

 

 前作と対になる描写の多い本作ですが、まずは「粘土」でも最も注目すべきポイントだった最初の犠牲者。前作の一人目にあたるレイ子さんはその作品を”壊される”趣きであったのに対して、「派生」の一人目であるさえさんの死に様は”作られる”様相を存分に示してくれています。

 「派生」のサントラの特色と言えるノリの良いEDMに合わせて製作する5名のアーティスト。それに呼応するように自らの手の粘土から顔をこねられて、姿かたちをねじ曲げられ、作品として”作られていく”さえさん。まさにカカメの再誕に相応しい光景です。

 思えば彼女もまた、木多の製作に携われる他のアーティストたちへの嫉妬にかられ、自らの作品に対する意欲に燃えていたのかもしれません。そういったところでも、さえさんはレイ子さんに対して非常によく呼応しているように思います。

 あと襲撃シーンも良いですね。彼女の冷え切った瞳が何ともたまらなく絵になる。さらに後のお顔チェンジシーン。カカメちゃんの人間下手くそ描写は前作でも良く出来ていて、特に前作での由香ちゃんはこの人間下手くそシーンが本当にうまかったと思うのですが、派生においても、さえさん自らの造形作家としての特色も生かして自分の形をこねあげつつ、自由気ままに餌を確保していてとてもかわいいと思います。

 

 そしてやっぱ派生の魅力を語る上で欠かせないのはミズエちゃんだと思うんですけれども。果林ちゃんに対する思いの強さと綿密に重ねられたその描写! 戸籍の上では家族でありながらも家族になりきれない不器用な距離感、愛憎こもごも、嫉妬と羨望、執着と庇護欲、全てをない交ぜにしたあの立ち振る舞いがたまらないじゃないですか。

 彼女にまつわる好きなシーンの一つが木多とのビンタ合戦……の直後。地面に突っ伏した彼女がわざと水をこぼすところです。ミズエの唯一無二性の一つが、作中で唯一、明確な殺意を他人に向け、カカメの復活を狙ったことだと思っています。果林への羨望故に(前作では登場人物にとって一番の憧れの対象だった)大学を蹴り、果林のために自らの作品の方向性を変えることまで飲んで、果林を侮辱した木多に本気で立ち向かい、怪異の力を借りてまで殺そうとする……その心意気が彼女を何とも気高く見せつけてくれます。

 そして言うまでもなく、そのミズエの死に様。前作から様々な形でアートの世界に渦巻くどうしようもない感情や状況を見せつけた末の、最も美しいのが何なのかというひとつの答えがあの表情じゃないでしょうか。彼女の死に様は、凄惨な死の相次ぐ「粘土」シリーズの中で最も美しい死体と言えるでしょう。あんなの好きにならない人どこにいますかね。もうほんと、ミズエちゃんのために見ろ。ミズエちゃんのために見ろ!! ミズエちゃんのために!!!!! ……というくらいの勢いで生きています、派生を見て以来。ずっと。

 

 ついでに語っておくと木多、ものすごく好きです。いや、こんなやつを好きというのも自らの品位を貶める気分にすらなるのですが、それくらい最低人間の描写が上手すぎる。体裁を良く保ちながらも、少しずつその利己性を露にしていき、それに相応しい凄惨な最期を見せつける。普通にしていても「粘土」きっての悪い人間ですが、こいつのせいでカカメチャンが大復活を遂げるので、本当に余すところなく悪ですね。カカメちゃん、男の腹を割って産まれがち。

 徐々にほころんでいく彼の態度もまあ見事なのですが、個人的に好きなのが叫び声やうめき声と言った本能から出る声が総じてめちゃくちゃ情けないことなんですよね。殴るときにしろ死ぬときにしろ大声上げているんですけど、どこか間抜けというか、獣じみているというか、到底しっかりとした人間の物とは思えない声を上げているあたり、とても良く本性を表していると思っています。

 とりあえず木多のような人間に脳のリソース割かれる自分の性癖がめちゃくちゃ悲しいです。悲しくない?

 

 最後にやっぱり果林ちゃん。親のこと、養子としての生活、様々に抱えることがあったのだろうと思いますが、木多のような人間でも粘土の脅威から一度救おうとするあたり本当に良い子ですよね。そういった清さや感情への素直さもまたミズエちゃんに妬まれる部分だったのかな~と思うとたまらなく愛おしいのですが。

 クライマックスのカカメ対果林、犠牲になったみんなの名前を呼んでもなお反応が無くて、「誰か」を求めながら最後に胸に突き刺した木片が父を呼び覚ますシーン。父を疎み恨みながらも作品を大切に持ち続けていたことが報われるシーンもたまらないですね。三田塚の恩讐の芸術に抗うのが最後は恭三の愛の芸術……陳腐かもしれませんが、愛に飢えた芸術活動をしていた果林のことを思うとよく報われたと感じます。

 また、エピローグに向かう果林と藍那先生のケンカ模様も、母を自殺で失った彼女だからこそ感じ取れる機微があるんだろうな~とか、互いに飢えていた家族というものが重なるんだろうな~とか色んな余韻があります。愛子ちゃんも心優しい女の子でしたが、あの子には帰る場所がありましたから。全てを失ったもの同士肩を寄せ合うという点でも、この二人がカカメの番をし続けるのが答えなのでしょうね。

 

 さて、他の子たちはストーリーの中ではどうしても霞みがちではあるのですが……それでも一人一人の個性が印象付けられるようにできているのが「派生」の魅力ですよね。

 私は染髪ガールのアズマちゃんがすきです! 髪を染めた彼女らしい、激しい色彩でインクをぶちまける製作のスタイルもCOOL。ついでに、喫煙女子要素、正直これ監督のフェチじゃないかなって思ってます。私も好きです。監督の性癖っぽいところで言えば前作と同様に舌ベロ顔ぐにゃ担当が一人に背負わされているのも好きです、まなみちゃんかわいい。

 でも実際これだけアーティストが揃っているとみんな趣味分かれませんか? もっとみんなの作品見たかったよな、な。各アーティストがスタイルを持っているというのも派生ならではの魅力じゃないですか。

 オレンジ色で失った母の温もりを描く果林ちゃん、自分の世界に没入して踊り狂うケイちゃんはスピリチュアルで閉塞的な印象の作品を作り、美意識が高く木多にちょっぴり憧れるリップ女子のまなみちゃんはその眼差しを示すように目をモチーフにしていて、骨が大好きな良子ちゃんは白と黒のコントラストが印象的な作品を作っている。良い。

 ミズエちゃんが色被り起こしちゃったのはただの偶然なのでしょうか。さえさんの彫像に見られる斬りつけたような意匠も、彼女の自傷癖を反映したのではないでしょうか。アートは作り手の鏡かもしれない……そんなことを考えるだけで何度でも楽しめます。ありがとう粘土派生。キャラ萌えが止まらねえ。たすけて。

 

 このように、ともかく派生がめちゃくちゃ面白いので、とりあえず派生見ろ! ……とすら思ってしまうのですが、やっぱり藍那先生無双や伏見の描写からしても粘土→粘土派生がセオリーだよなあとなってしまう次第です。三田塚と伏見の出来事やカカメチャンについて知っておくべきだし、個性を獲得しきれない受験生たちを見てこそ今作のアーティストのより取り見取り感が際立つ。それぞれの良いところを存分に楽しんで欲しいのがファンとしての思いです。

 ということで……おい、血を吸う粘土、もう一回見ないか?

 

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